「徴用工」問題を考えるために


混乱したギロンを片付けたい!

「徴用工」問題を考えるために

混乱したギロンを片付けたい!

誤解その1
「強制連行、強制労働はなかった」という誤解

 2018年10月、韓国の最高裁に当たる大法院で、元「徴用工」の訴えを認めて日本企業に慰謝料の支払いを命じる判決が確定しました。これに対して、日本では批判的な論調が多く出されています。しかし、そのなかには多くの誤解も混じっています。たとえば、「徴用工」とは実際には「出稼ぎ」であって、強制連行、強制労働などなかったという主張です。実際には、朝鮮の若者たちが強制的に動員され、強制労働を強いられたこと自体は、日本の裁判所も認めている事実であり、否定することはできません。

誤解その2
「個人請求権はすでに消滅している」という誤解

 元「徴用工」たちは強制動員・強制労働に対する慰謝料を求めていますが、日本政府は、日韓請求権協定によって彼らは賠償を請求できなくなっていると主張しています。メディアのなかには、これを元「徴用工」たちの「個人請求権」はすでに消滅したと説明するものもありますが、これは事実ではありません。河野太郎外相も「個人の請求権は消滅していない」ことは認めています。

誤解その3
「日本はすでに韓国に賠償している」という誤解

 「すでに韓国への賠償は行われている」「だから元徴用工への補償もすでに行われている」と主張する人々がいます。しかしこれは完全な誤りです。日本は韓国に対して「賠償」を行っていません。むしろ日本政府自身が「賠償はしていない」と強調してきました。
 

疑問その1
「韓国は国と国との約束を破った」と言えるか

 大法院が元「徴用工」の訴えを認めて日本の動員企業に慰謝料の支払いを求めたことについて、日本政府は、韓国政府が「国と国との約束」を破ったと非難しています。「国際法違反だ」とまで言う人もいます。メディアの論調も、それに同調するものが多いようです。しかし、本当にそう言えるのでしょうか。

疑問その2
日韓が協力して解決することは本当に不可能か

 韓国の大法院判決に対して、日本政府は「日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すもの」と反発し、韓国側に「適切な措置」を取るようにと要求しています。これでは膠着(こうちゃく)状態が続くばかりです。日韓両国が協力して、強制連行・強制労働の被害者らも納得するような解決の途を探すことは、本当に不可能なのでしょうか。そうでもないかもしれません。

 
 
about us

このサイトでは、「徴用工」問題=戦時強制動員問題をめぐる論議を、研究成果や判例などの「ファクト」に沿って、可能な限り交通整理してみるものです。私たちは、日本の言論空間に混じり散らばっている「言葉のガラクタ」を片付け、真摯な議論を始められる環境をつくりたいと考えています。

2018年10月の韓国大法院(最高裁)判決を受け、被告である日本企業の資産の「現金化」が、大きな注目を集めています。独り歩きしている「現金化」問題について、法的観点から整理してみましょう。

強制動員・強制労働を行った政府と企業が共に出資した基金を創設し、財団を通じて動員被害者に補償を行う――そうしたかたちで解決を実現したのが、第2次世界大戦時に日本の同盟国であったドイツです。

日本のメディアの中では、大法院の元徴用工勝訴判決は文在寅政権が出させたものだ、という説が広がっています。しかし、この「文在寅による判決」説には、相当な無理があります。荒唐無稽と言ってもよいかもしれません。

最新の研究では、労務動員のあり方は日本人と朝鮮人では大きく異なることが分かっています。朝鮮人の動員と、日本人の動員のどこが異なるのかを確認していきましょう。

2019年7月、韓国で『反日種族主義』という本が刊行され、話題になりました。同年11月には日本でも翻訳本が出て、出版社によれば2020年1月時点で40万部が売れているそうです。

2021年4月27日、日本政府が閣議決定した「衆議院議員馬場伸幸君提出『強制連行』『強制労働』という表現に関する質問に対する答弁書」を検証します。

「朝鮮人の労務動員は、強制労働条約が認める強制労働ではない」という日本政府の主張は、強制労働条約の間違った解釈の上に成り立っており、国際社会で認められるものではありません。なぜそう言えるのでしょうか。